JPホールディングスは、保育所運営の最大手でグループ力を活かした総合子育て支援カンパニーです。17年3月期は保育士待遇改善で減益予想ですが、待機児童解消政策が追い風となる事業環境に変化はありません。新タイプ学童クラブ「AEL」や海外展開も推進して収益拡大が期待されます。株価は安値圏だが政策関連として見直し余地が大きいでしょう。

■保育所運営の最大手、グループ力を活かした総合子育て支援カンパニー

 保育所・学童クラブ・児童館などを運営する子育て支援事業(日本保育サービス、四国保育サービス)を主力に、保育所向け給食請負事業(ジェイキッチン)、英語・体操・リトミック教室請負事業(ジェイキャスト)、保育関連用品の物品販売事業(ジェイ・プランニング販売)、研究・研修・コンサルティング事業(日本保育総合研究所)も展開しています。

 保育理念を「生きる力を育む」として、オートロックや緊急通報機器などを整備して職員の安全研修も充実した安全・セキュリティ管理、食物アレルギー・感染症・食中毒などに対応するための各種マニュアル整備、保育用品一括購入でコストを抑制するコスト管理、ジェイキャストによる独自の保育プログラム(英語・体操・リトミック)、ジェイキッチンによる安全な給食とクッキング保育、日本保育総合研究所による発育支援などに強みを持ちます。

 16年3月期末、首都圏中心に、保育所159園(認可園・公設民営10園、認可園・民設民営118園、東京都認証保育所26園、自治体認定保育所1園、その他認可外保育所4園)、学童クラブ55施設、児童館10施設の合計224園・施設(15年3月期比24園・施設増加)の子育て支援施設を展開しています。保育所運営の売上規模で競合他社を大きく引き離す業界最大手です。

 なお7月29日、相鉄ホールディングスの子会社で横浜市において認可保育所および民間学童施設を運営する相鉄アメニティライフの全株式を取得して子会社化(株式譲渡実行9月30日予定)すると発表しました。重点拠点の一つである横浜エリアの事業展開の充実を図ります。

■保育士確保に向けて採用手法に工夫、待遇改善も推進

 人材活用面では、配偶者の転勤への対応や時短勤務などそれぞれのライフイベントに添った勤務体系、福利厚生・研修制度の充実、男女を問わない産休・育休取得の推進などに取り組んでいます。女性の産休・育休取得率は90%以上です。

 保育士の新規採用については例年、概ね新卒200名程度、中途100名程度を採用しています。16年春の新卒採用については、保育士資格を有する学生を即戦力に近い人材として採用するとともに、別の新規採用枠として保育士資格を持たない新卒を採用するなど保育士確保に向けて採用手法を工夫しています。保育士資格を持たない新卒の新規採用については、入社内定後に社内で業界初の「保育士養成講座」を開設して保育士試験にチャレンジさせます。保育士を目指す意欲のある一般学生に対して保育士資格取得のサポートを行う業界初の試みです。

 16年3月には日本保育サービスが学校法人敬心学園日本児童教育専門学校の2名に4月から奨学金支給を開始すると発表しました。保育士志望学生向け給付型奨学金制度(日本保育サービスへの就職を希望する学生対象)で、保育士を安定的に確保するため全国規模で保育士を目指す学生に奨学金支給を広げる方針としています。

 16年5月には日本保育サービスに勤務する保育士全員の賃金水準を引き上げると発表しました。引き上げ幅は年収ベースにして平均4%相当の見込みで、保育士改善費用として17年3月期に3億円を予定しています。16年3月期のベースアップ8%に続く2年連続の大幅賃上げとなります。また18年3月期にも賃金水準の引き上げを実施する予定で、社会的に評価される賃金制度の構築を目指すとしています。

■17年3月期の保育士待遇改善と新規開設

 国の政策に先駆けて賃金大幅引き上げなど保育士の待遇改善を実施するための費用として3億円、保育園での業務負担を軽減するためのシステム導入関連費用として1億円を予定しており、保育士の確保と職場環境の改善による離職率の低減を目指す取り組みを推進します。

 新規開設は認可保育所13園、学童クラブ・児童館10施設の予定で、このうち16年4月末時点で認可保育所9園、学童クラブ6施設、児童館3施設を開設済みである。山形市、郡山市、藤沢市、大津市、豊中市、福岡市、那覇市に初進出する。

■中期経営計画で保育士待遇改善、新学童クラブ、海外展開を推進

 16年5月に、新中期経営計画の目標値見直し(保育士不足のため目標値を下方修正)が発表されました。それによると、重点目標は、安全対策の強化および保育の質のさらなる向上、新規開設および既存施設の保育士増員による受入児童数の拡大、人材投資の拡大(採用活動強化、人材育成強化、人事評価制度見直し)、経営管理体制の再整備(事業リスク管理体制強化、グループ会社連携強化)、収益基盤拡大に向けた新規事業への着手(民間児童クラブ、既存サービスの拡販、海外展開)としています。

 重点目標の実現に向けた諸施策は、安全管理体制のさらなる強化(専門部署を創設して組織横断的な体制強化を推進)、従業員給与の引き上げ(15年度保育士の給与引き上げ8%実績、16年度引き上げ4%予定)、各分野におけるシステム導入(業務負担の軽減、経営管理の効率化)、保育士確保に向けた施策のさらなる充実(求人費予算の増額)としています。

 認可園以外の新規分野への事業展開では、グループ総合力を活かし、英会話・体操・音楽などを導入して料金設定の面で自由度が高い「公的ではない新学童クラブ」などによる幼児教育、英会話プログラムなどの外販、他社既存保育園の給食請負受託などを推進する方針です。M&Aの活用も検討するようです。

 また、16年7月には新タイプの学童クラブ「AEL(アエル)」を9月1日に東京都文京区湯島にオープンすると発表しました。新規事業の位置付けで、従来の学童クラブと異なり補助金を申請しません。学童保育利用者の要望に対応して、独自のプログラムにより「学童保育+問題解決能力などのライフスキル+習い事」が1カ所で受けられます。17年3月期中に第2号施設のオープンも予定しています。

 8月24日には「子育て支援室すくすくぷらす」を東京都港区に9月3日オープンすると発表しました。集団のなかで過ごすことが苦手な子どもとその保護者への支援を行い、子どもの発達を促す教室です。グループ企業の日本保育総合研究所発達支援チームが運営します。

 さらに海外はベトナムで幼稚園事業を本格展開する方針を打ち出しています。現地で急増している中間層の共働き世帯をターゲットに幼稚園事業を展開します。現地で定められた教育カリキュラム以外に、工作、音楽、語学などの独自教育も取り入れます。現地でスタッフを採用し、17年3月期中に1~2カ所の開設を目指します。現在は外資規制があるため、当面は現地企業と合弁会社を設立し、認可外幼稚園として展開します。将来的には100%出資の現地法人で、公的幼稚園として日本国内と同規模の展開を目指すとしています。

■待機児童解消政策が追い風で中期的に収益拡大基調

 アベノミクス成長戦略では「女性活用推進」を重点分野に位置付け、17年度末までに約40万人分の受け皿を確保することで待機児童解消を目指しています。そして15年4月には新「子ども・子育て新支援制度」がスタートし、アベノミクス「新3本の矢」では受け皿目標を50万人に引き上げました。

 都市部を中心に保育サービスの需要は高水準であり、社会問題化した待機児童解消政策論議が活発化し、保育士待遇改善、保育所運営補助金拡大、各種規制緩和などの政策が進展する見込みです。国の待機児童解消政策が追い風となる事業環境に変化はなく、中期的に収益拡大が期待されます。